衰退市場

衰退市場でも勝ち残る!衰退市場の具体例と衰退市場で取れる4つの基本戦略を徹底解説

「売上が伸びていたはずの市場が、長期的に見て縮小し始めている…」
こうした状況に直面したとき、企業はどのような手を打つべきなのでしょうか。大手企業ばかりでなく、中小企業でも十分に使える戦略があります。ポイントは、限られた需要の中で自社の強みを最大限に活かしながら、どのように利益を確保・拡大していくかです。本記事では、衰退市場において有効とされる4つの基本戦略をわかりやすく解説します。


1. 衰退市場とは?

衰退市場とは、景気の波や一時的な流行の変動ではなく、長期にわたって需要や販売数量そのものが減少し続けている市場(今後も市場の縮小が見込まれている市場)を指します。技術革新・人口動態の変化・消費者ニーズの変化など多岐にわたる要因が背景となり、縮小傾向が続くのが特徴です。

衰退市場では、売上が減っている中で固定費(売上高に関係なく発生する一定のコスト)をどう回収するかが重要になります。衰退市場では、ライバルとなる競争相手が市場から撤退することが期待できますが、競争相手が少なくなっても、買い手が価格に敏感だったり、強力な競合が価格を引き下げたりすると、激しい価格競争に巻き込まれるリスクがあります。


2.衰退市場の具体例

衰退市場として代表的に挙げられるのが、次のような分野です。これらはいずれも、技術革新や消費者のライフスタイル変化などによって長期的に需要が落ち込んでいる市場です。

(1) CD・DVDなどの物理メディア市場

音楽・映像のストリーミングサービスが普及したことで、CDやDVD、Blu-rayなど物理メディアの売上は縮小傾向にあります。特典やコレクター向け商品で一定の需要は存在するものの、全体としては配信サービスへの移行が加速しています。

衰退要因の例

  • スマートフォン・タブレットでのストリーミング視聴の定着
  • サブスクリプション型モデルの拡大
  • 場所を取らないデジタルデータへの移行

(2) フィルムカメラ・写真現像市場

デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能が向上し、フィルム写真の現像需要は大幅に減少しました。かつては街中に多く見られた写真現像店も激減しています。ただし、アナログの味わいを好むファン向けや、インスタントカメラ・チェキなどの特定のニッチ需要は根強く存在します。

衰退要因の例

  • デジタル撮影の利便性・コスト優位性
  • SNSへ即時アップできるスマホ写真の需要拡大
  • フィルム現像にかかる時間・費用の高さ

(3) 紙媒体の新聞・雑誌市場

インターネットや電子書籍の普及によって、紙媒体全体の発行部数・売上は年々減少を続けています。速報性の高いニュースはオンラインにシフトし、若年層を中心に紙離れが進んでいます。一方、高齢層や専門誌などには今なお一定の購読層が残っています。

衰退要因の例

  • 無料ニュースサイト・SNSの拡大
  • オンライン広告へのシフト
  • 若年層の紙メディア離れ

(4) 固定電話サービス・公衆電話市場

携帯電話やスマートフォンの普及によって、固定電話や公衆電話の利用者数は大きく減少しています。特に個人宅では固定回線を解約する動きが進み、公衆電話の設置台数も継続的に削減されています。ただし、企業ではFAXや代表番号などで固定回線が使われているケースも一部見られます。

衰退要因の例

  • 携帯電話の通話定額プランの普及
  • スマートフォンの通話アプリ・メッセージアプリの活用
  • 若年層の固定電話離れ

(5) レンタルビデオ(VHS・DVD)店舗

かつては大手チェーンを中心に多くの店舗が展開されていたレンタルビデオ業界ですが、動画配信サービスによって縮小の一途をたどっています。新作をわざわざ借りに行く手間よりも、オンラインでいつでも視聴できる便利さが勝っている状況です。

衰退要因の例

  • ネット配信サービス(定額動画配信)の普及
  • スマホやタブレットで場所を選ばず視聴可能
  • 店舗経営における家賃や在庫コストの負担

3.衰退市場で取り得る4つの基本戦略

上記は代表的な衰退市場ですが、代表的な市場にかかわらず飲食業の特定の領域などをはじめ、市場が縮小し続けているものは多くあります。もしあなたの事業が衰退市場である場合、企業が生き残るために検討される代表的な戦略は次の4つが挙げられます。

(1) 市場リーダーシップ戦略

需要が縮小傾向にある市場でも、シェアを高めてトップポジションを確保し、生き残りを図る戦略です。市場でリーダーシップを握ることで、衰退の進行をある程度コントロールすることになり、競合他社が撤退していく中でシェアが拡大し、ある程度価格の決定権を持てるようになることが狙いです。

(2) ニッチ戦略

衰退市場のなかでも、比較的需要が安定している特定のセグメントやニッチなニーズを狙い撃ちするようにシフトする戦略です。ニッチ化することで大手との競合を回避し、自社の強みを最大限活かして利益を確保します。

(3) 収穫(刈り取り)戦略

これ以上の投資を行わずに、現状の設備・資源を使いきりながらできるだけ利益を回収し、その後撤退する戦略です。固定費をできる限り削減し、最終的な撤退タイミングを見据えて少しでも投資を回収してから撤退するという戦略です。

(4) 撤退戦略

将来性が見込めないと判断した段階で、可能な限り早期に撤退する戦略です。新規投資を抑え、別の成長分野へ資金や人材を振り向けたほうが有利とされる場合に選択されます。


4.衰退市場で戦略を選ぶ際に考えるべきポイント

  1. 買い手の価格感度・交渉力
    衰退市場では、需要そのものが減少しているため価格競争に陥りがちです。ただし、買い手が価格にさほど敏感でない・交渉力が小さいセグメントがあれば、そこをしっかり押さえることで利益を確保しやすくなります。
  2. 自社の強み・独自性の活用
    市場が縮小する中でも、ユニークなサービスやブランド力があれば顧客はついてきます。限られた需要を自社に取り込めるよう、技術力や品質、サービスのきめ細やかさなど、強みを再確認しましょう。
  3. 競合他社の撤退・参入動向
    需要が減少している市場では、いち早く撤退を考える企業も現れます。大手が撤退するとシェアをまとめて獲得できるチャンスが生まれる一方、需要そのものが急速に縮小する可能性もあります。競合の動向を常に観察することが大切です。
  4. タイミングとコスト管理
    特に収穫(刈り取り)や撤退戦略を検討する場合は、「いつ撤退するか」の見極めがカギです。撤退を先送りすると固定費など余計な出費がかさむ一方、早すぎる撤退はまだ残っている利益の機会を逃すリスクがあります。

5.まとめ

衰退市場だからといって、必ずしも「何もできない」「ただ撤退するしかない」というわけではありません。限られた需要の中にもビジネスチャンスは存在し、シェア拡大や差別化による利益確保が可能です。また、ニッチ需要に集中して小さくても強固なポジションを築く方法もあります。

一方で、事業の伸びしろが乏しくリターンが期待できない場合は、収穫戦略や早期撤退を選択し、新たな成長領域に経営資源を振り向けるのも十分な選択肢となります。大切なのは、自社の強みを活かせるか、投資対効果はどうか、そしてどの戦略が最も利益をもたらすかを冷静に見極めることです。

変化の激しい時代においては、市場が衰退するスピードも速まっています。ぜひ早めに情報を収集・分析し、最適な戦略を選択することで、厳しい市場環境の中でも持続的な成長・安定した収益の確保を目指してください。