私は、毎月コンスタントに10人以上の方から起業や創業の相談を受けています。そんななかで、「起業してみたいけどアイデアない」「起業アイデアがないので動けない」と悩む方は多いです。また、自分で事業をしたことがなかったり、家族がサラリーマンや公務員などで自分で事業をしている人が周りにいないことで、起業の不安を大きく感じている人がいます。リスクをおさえて会社員として働きながら副業的に週末起業を実行するなど、独立への足がかりとなるようなアクションを取る人も多いでしょう。この記事では、1人でリスクを抑えて起業するスモールビジネスを前提に、起業のアイデアを生み出す3つの視点を紹介します。
1. どうして起業のアイデアが浮かびづらいのか?
なぜアイデアが出にくいのでお願いしますか?その背景には、以下のような理由があります。
- 周囲に起業した人が少ない:自分の身近に独立起業した人が少なく、具体的な成功・失敗例を直接聞きにくい環境では、ビジネスのイメージが湧きづらいという人がいます。起業をするより堅実に働いたほうがいいのではないかと考えるなど、起業したいけどリスクを感じ先延ばしにしている人も少なくありません。
一方で、アイデアや計画がほとんど固まっていないように思える状況でも、起業や創業に踏み切っている人がいます。このような人は、両親が事業をしている、配偶者が事業をしている、友人が事業をしていて新規事業に誘われたなど、周囲にすでに事業を営んでいる人がいるケースが多いです。起業している人が周りにいると、必要以上に起業に対する不安や抵抗感が高まり、イメージがしづらく、先延ばしにする傾向があるように感じます。 - 自ら起業した経験がないため明確なイメージが持てない:起業に関する情報は調べると、かなりたくさん出てきます。中には、起業のアイデアや儲け話のようなものもあるでしょう。それらを信じていいものか、疑念を持つこともあるでしょう。また、人は自分が経験したものや知っているものの中からしか判断ができません。起業したことないと自分に何ができるか、何が向いているのかもわからず、なかなかアイデアをまとめられないでしょう。コロナウィルス感染症が流行する前は、起業するのに人気な業種として「飲食業」がありました。自分も利用したことがありイメージしやすく、料理自体も好きで、親近感があり自分にもやれそうだと思いやすい業種です。また、フランチャイズチェーンも多く、参入しやすいのも理由でしょう。しかし、このような多くの人がイメージしやすく、参入するのが簡単な業種は、競争が激しく、基本的には収益化が難しい傾向があります。経験がないため、起業のイメージが持てず、自分にあった事業を考えられないというのはよく見受けられます。
- 情報はあれど「確からしさ」に欠ける:インターネット上には無数のビジネスモデルや成功事例が溢れていますが、中には根拠が不足し誇張された情報も多いです。判断しづらく、行動をためらってしまいます。例えば、宝くじを当てるノウハウは信じない人が多いでしょう。たまたまその人が宝くじが当たっただけで、再現性(自分も当たること)が低いということは、分かります。このようなその人が結果を出したのは本当なのだけれども、今のタイミングで、自分も同じことをして、同じような結果が出るわけではありません。また、もしかしたらその人は結果を出すために裏で相応のハードワークをしている可能性がありますが、そういう話は表に出さないので、まるで、誰でも簡単に成功できるような話になってたりします。まっとうな情報もあるのですが、経験が不足していると不確かな情報と確かな情報を判断するのも難しくなります。
- 現実的に実施する事業だと判断できない:やりたいビジネスモデルを見つけても、「自分の特性やスキルとマッチしているのか」「長く続けられるのか」が不透明ですと、一歩を踏み出さずに立ち止まることがあります。これならいけると確信が持てる事業アイデアと出会えるまで事業をスタートできず、事業をスタートできない理由をアイデアのせいにしているかもしれませんが、これならいけると確信が持てる事業アイデアなどないので、そのような状況だといつまで経ってもスタートを切ることができません。
これらの要因により、自信を持って「これだ!」と思える起業アイデアが生まれにくいのです。 では、これを受けて「独立や起業アイデア」を明確にし、リスクを減らしながら起業するためのアイデアの出し方を具体的に伝えます。
2. 適性(自分のできること)から起業アイデアを考えよう
転職をするときにあなたはどのように考えますか。これまで経験してきたこと、身に着けてきたスキルや知識など、これまでのキャリアの棚卸しから始める人が多いでしょう。起業アイデアを迷っているところを見落としがちなのが、自分自身の「適性」に目を向けることです。これは就職や転職活動の際によく行う「キャリアの棚卸し」に似ています。キャリアの棚卸しでは、これまでの職務経験、培ってきたスキル、知識、得意分野などを振り返り、自分がどのような仕事に向いているか考えますよね。同じように、起業を検討する際もまずは自分の強みを再確認することが出発点となります。
社会経験が少ない人でも、アルバイト、部活、サークル活動、家事や育児、趣味や勉強会など、これまで身につけてきた知識やスキルは必ずあるはずです。大学での研究活動で得た分析力、趣味で続けたブログ運営で磨かれた情報発信力など、これらの要素はすべて「自分の強み」として起業アイデアの種になります。
起業というと、ゼロから新しいアイデアを「ひねり出す」イメージかもしれませんが、このような自分の「できること」から起業を考えるアプローチは、アイデアをカタチにしやすく、またスモールビジネスを安心感を持って始めまることに役立ちます。
3. 市場の成長性やライバルの少なさ、参入障壁から起業のアイデアを考えよう
さて、適性から「この分野が向いているかも」というアイデアが浮かんで来たら、その分野が本当にビジネスとして成立するのかを冷静に判断する必要があります。ここでカギとなるのが「市場性の評価」です。
例えば、飲食業だとライバルが多く、参入障壁(その事業の始めやすさ)が低いため、多くの人がそこで事業を開始できます。
ですので基本的には、競争が厳しい業界で、起業する市場としては望ましくありません。
しかし、市場を細分化すると見え方が変わってきます。
富裕層向け、観光客向け、特殊な嗜好の人向け、体験型価値、など様々な切り口でユニークな事業にできると、一気にライバルは減るかもしれません。
「富裕層向けのグルメ」「地元の食材に特化した体験型グルメイベント」「特定の食習慣(ビーガン、グルテンフリー、低糖質など)に絞る」 「かなり特殊なニーズに絞ったメニュー開発」といった工夫を凝らすことで、ライバルの少ないニッチ市場を開拓できます。
また、一時的なブームに惑わされないことも大切です。 タピオカや高級食パンなど、注目を集めた業態は多くのプレイヤーを魅了し、参入が増加します。市場の成長性などの魅力も一定あるでしょうが、それ以上にプレイヤーが増えると、その市場は全く魅力的なものではなくなります。トレンドに流されるのではなく、その絞った市場が中長期的に成長していけるポテンシャルがあるかどうかを分析する必要があります。
4. 好きなこと、社会貢献できること、意義を感じることから起業のアイデアを考えよう
続いての軸としては、自分の好きなことややりがいを感じることを仕事にするという考え方です。
起業するということは、誰からも命令や指示をされません。
それはイイことのように感じるかもしれませんが、良い面だけではありません。
誰かに管理されないと、さぼりたいだけさぼれてしまいます。
起業や創業したら、自分のことは自分で管理する必要があるのです。
そんなときに、自分のやりがいを感じることを仕事にすると、さぼらず頑張れます。
ハードワークをすることができます。起業してうまくいくかどうかの分かれ目の一つに、地道に頑張れるかどうかというのがあります。
好きなことややりがいを感じることなら、誰かに命令されなくても、自分の内側からやる気が出て、やり続けることができます。
そういった意味で、やりがいを感じれることで起業をするという点はとても大事です。
私は、初めて起業したときに、仕事がなくなる不安が強くて、「市場性」だけを評価して何をするかを決めました。
自分の得意なことではなかったため、サービス品質が高くなく、我ながら微妙でした。
また、好きなことややりがいを感じることでもなかったため、腕を磨くための努力をする気も起きず、仕事の依頼を受けても気が進まないといったことがありました。
その事業は、顧客ニーズはあったので、3年目で黒字化できましたが、4年目に廃業を選び、今ではとても苦い思い出となっています。
だからこそ、ぜひおすすめしたいのは、自分の適性ややりがいという側面からもじっくり起業のアイデアを考えてみてください。
特に、リスクを抑えて起業・創業したいというスモールビジネスの発想の人には上記の考え方はとても有効です。
【まとめ】
「起業アイデアがない」と感じる背景には、起業経験者が周囲にないことや、起業の経験がないこと、起業関連の情報の真偽が見えにくいこと、などが挙げられます。打破するには、まず自分の得意な領域(適性)を見直し、それをビジネスとして成立させられるか、市場性や競合状況を踏まえて検討しましょう。またやりがいを感じれる仕事を選べば、地道な努力を継続しやすくなります。
「適性」「市場性」「やりがい」の3つを軸に据えれば、思いつきではなく、長く続けられる起業アイデアを形にすることが可能です。週末起業など、リスクを抑えながら始める方法も有効ですので、ぜひこれらのステップを参考に、独立起業への確かな道を描いてみてください。