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事業立ち上げで見落としがちな「代替品の脅威」とは?

事業立ち上げで見落としがちな「代替品の脅威」とは?

新規事業を創業したり、新規事業を立ち上げたりする際、ビジネスプランを考えるために「市場調査」や「競合分析」を行うことは非常に大切です。これから参入しようとしている市場において、既に事業を行っているどんなライバルがいるかを知ることで、じゃあ自分たちは、「何を強みに」「何で差別化をして」「価格はいくらにするのか」といったことを決めることに役立てられます。創業や新規事業の立ち上げにおいて、このすでにいるライバルたちを調べるということは、絶対に外せない行動だと考えます。

ここでライバルとなるのは、既に商品を販売、あるいはサービスを提供している企業だけでなく、商品・サービスは全く異なる形だけど、同様の顧客ニーズを満たす「代替品」を提供している事業者も含めまれます。

本記事では、M.ポーターの「5フォース分析」に登場する「代替品の検討」に焦点を当て、特に創業者や中小企業が新規事業を選ぶ際のヒントとなるよう解説していきます。


1. 「代替品の脅威」とは?

新たな事業を検討する際に必ず押さえておきたいポイントのひとつが、「自社が参入しようとしている業界には、どんな代替品が存在するのか」という視点です。米国の経営学者マイケル・ポーターのファイブフォース分析(5フォース分析)では、業界の外からの脅威(競争要因)として、「新規参入企業の検討」と並んで「代替品の検討」が挙げられています。これは、顧客の同じようなニーズを満たす別の製品・サービスが台頭することで、その製品・サービスのニーズが奪われ、収益性が低下する可能性があることを示しています。

ファイブフォース分析は、米国の経営学者マイケル・ポーターが提唱した業界構造の分析手法です。以下の5つの外部の利害関係者との綱引き関係(フォース)を捉えることで、業界全体の競争構造と収益性を読み解く方法です。

  • 新規参入企業の脅威
  • 代替品の脅威
  • 売り手(供給者)の交渉力
  • 買い手(顧客)の交渉力
  • 既存企業間における競争

このうち「代替品の脅威」は、業界の外部に視点を置く視野として捉えられ、既存の製品・サービスと同等以上の価値を提供する何かが出現した場合のリスクを示します。


2. 代替品が存在する可能性がもたらすリスク

(1)価格競争の激化

代替品が存在すると、すでに存在する同種の製品やサービスと同様に、顧客は「より安く」「より手軽に」ニーズを満たす選択肢と認識されます。結果、製品・サービスの価格にも影響が生まれ、割り引き合戦などに巻き込まれる可能性があります。

(2) 差別化の必要性が増大

顧客が価格の手頃さより重視する場合、より安価に利用できる代替品に切り替える可能性が生まれます。独自の価値や強みを十分に伝えられなければ、あるいは、代替品に変更することによる損失(スイッチングコスト)を意図的に設けなければ、市場シェアを奪われてしまうリスクが考えられます。

(3) 事業の伸び悩み

代替品が登場すると、従来の市場における競争は一層激化します。特に、中長期的に見て市場が飽和状態へ向かうと、新規参入企業や既存企業にとって将来的には懸念リスクが懸念されます。


3. 中小企業が創業・新規事業時に意識すべきポイント

(1)顧客の「目的」から考える

顧客がなぜその製品やサービスを利用するのか、「解決したい課題」や「満たしたいニーズ」を深堀りしましょう。同じ顧客ニーズを満たす「意外な製品・サービス」があれば、あなたの事業の代替品になり、事業を運営するうえでのライバルとなります。

  • 「リラックスする時間を過ごしたい」 → マッサージ店、温浴施設、アロマグッズなど
  • 「快適に移動したい」 → 自家用車だけでなく、カーシェア、電動キックボード、宅配サービスなど

(2) 代替品リストを作成する

新規事業の企画段階で、「自分たちが参入しようとする市場には、どんな別の手段があるのか​​?」を洗い出してみましょう。業界が異なっても、顧客が同じニーズを満たすものはすべての候補に入れます。広く広くとらえることが大切です。

(3) 差別化戦略を明確にする

代替品が多数ある市場では、価格競争に巻き込まれやすくなります。そこでより重要になるのが差別化要素の明確化です。

  • 質の高さ・デザイン性(ブランドを確立する)
  • サービスやサポート面での付加価値(アフターサービス、コンサルティング)
  • 体験やコミュニティ作り(ファンが集まる場提供、イベント開催)

価格以外の魅力を打ち出すことで、代替品との差別化を図り、顧客の支持を得やすくなります。製品やサービスによって、差別化しやすいポイントは異なります。自社の製品やサービスの特徴、またこれまで培ってきた競争力を生み出す源泉となる資産などから考え、代替品も含めて市場における競争力を生み出せるかどうかを検討する必要があります。


4. 代替品分析の実践例

事例A:カフェを開業する場合

  • 想定顧客のニーズ:コーヒーを飲みながらくつろぐ、作業場所が欲しい、友達との会話を楽しむ
  • 潜在的な代替品:コンビニのコーヒー、在宅ワークでのオンラインミーティング、フリースペースやコワーキングスペースの利用など

このように「カフェ」という業態だけを見ていると、「隣の喫茶店が競合」と思いがちですが、もちろんそれだけではないということがご理解いただけるでしょう。

そこ差別化のために、例えば「くつろげる空間」「地域コミュニティとしての役割」「徹底した接客サービス」などを強化することで、代替品では得られない価値を提供し、差別化をすることができます。

事例B:オンライン学習サービスを開始する場合

  • 想定顧客のニーズ:新たな知識・スキルを学びたい、資格取得を目指す
  • 潜在的な代替品:書籍、YouTube無料の講座、他のオンラインスクール、大学や専門学校の通信カリキュラムなど

無料の情報がインターネット上に溢れている現代において、「オンラインスクール」の代わりになるものはいくらでもありますすでに競争が激しい市場に参入するのなら、1つでも明確に勝てるものを作る必要があります。


5. 代替品を味方にする方法

「代替品を脅威」とだけ考える必要はありません。 場合によっては提携・コラボレーションによって互いに補完しあえる可能性があります。

  • 顧客層が明確に分離する:
    「うちはプレミアム層、あちらはライト層」のように棲み分けが図れる場合もあります。
  • 補完サービスとして連携する
    近いニーズを満たす別業態とパッケージ商品や共同キャンペーンを行うことで、新たな顧客を獲得できることもあります。

まとめ

新規事業を選択する際、同じ市場や同じ業種の場合だけでなく、「顧客が求めるニーズを同じくする、全く異なる業界の代替品」にも目を向けることは非常に重要です。技術進歩やライフスタイルの変化が激しい現代では、思わぬ製品やサービスがあなたのビジネスのシェアを奪う可能性があります。

  1. 顧客のニーズ・目的を深く理解する
  2. 代替品の存在をリストアップし、客観的に分析する
  3. 価格に頼らない差別化戦略を練る
  4. 場合によっては代替品との協業・補完関係も視野に入れる

これらを踏まえて事業の方向性を検討すれば、「代替品の検討」を考慮してリスクとして認識するだけでなく、前向きなビジネスアイデアを思いつくきっかけにできるでしょう。これから新たに事業の計画を練る際には、競合他社の分析において代替品の分析をぜひ取り入れてください。

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