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【診断士試験対策】コストを減らす事業経済性(規模の経済性、習熟の経済性(経験曲線)、範囲の経済性、密度の経済性)の解説

ポーターの競争戦略のコストリーダーシップ戦略を選択しない企業でも、事業の収益性を上げるためにコストを減らすことは、すべての企業の課題でしょう。

経営戦略においてコストをいかに減少させるかは、古くから研究されている土台ともいえる理論で、多くの企業で活用されています。

中小企業診断士試験を勉強する方は、必ず理解しておきたい考え方です。

この記事では、コストを減らすメカニズムの代表的なメカニズムである、「規模の経済性」、「習熟の経済性(経験曲線)」、「範囲の経済性」、「密度の経済性」を解説します。

記事を読み終えるとコストを減らすための代表的なアプローチを理解いただけます。


  コストカット

最も有名なコスト削減のアプローチ、規模の経済性の解説

「規模の経済性」とは、規模を大きくすることでコストを減らすアプローチです。

「規模の経済性」は、実は2つの考え方があります。

固定費を減らす規模の経済性と変動費を減らす規模の経済性です。

固定費を減らすのが規模の経済でしょって思っている方は、混乱させてしまいますが、実は変動費を減らす規模の経済性もあります。

狭義には固定費を減らす意味で、広義には変動費を減らす意味も含めると考えてください。

さて、その2つをそれぞれ順に解説します。

まずは狭義の固定費を減らす規模の経済性です。

これは、製造業を考えるとイメージしやすいでしょう。

あるパン工場を考えてみましょう。

あるパン工場では、パンを1つも製造しなくても、工場地代家賃と人件費と製造設備の維持費用が発生します。

毎月100万円が固定的に発生しています。

パンは原価20円で、販売価格100円で製造しています。

パンをたくさん作れば作るほど、パン1個当たりの固定費が下がります。

例えば、1か月に1万個パンを製造する場合は、パン1個当たりの固定費は、100万円÷1万個=100円です。

1か月に4万個製造する場合は、パン1個当たりの固定費は、100万円÷4万個=25円です。

つまり、パンを製造する規模が大きくなれば大きくなるほど1個当たりの固定費が下がるのです。

規模の経済と言われて多くの人が思いつくのがこれでしょう。

この規模の経済において、期待通りにコストが減らないケースがあります。

一つは、稼働率です。生産量が多くなればなるほどコストが下がるのだったら、投資をして製造量を多くすれば良いかといえばそうではありません。

稼働率が低下してしまうと、規模の経済性をコストの低減効果より投資コストの方が高くなってしまい、マイナスになります。

コロナウィルスが蔓延した際に、一時的にマスクが不足したことが記憶に新しいでしょう。

急にマスクの需要が増えたわけですが、中小のマスク製造業者は、マスクの製造設備や採用の拡大などの投資に後ろ向きの会社も多くありました。

これは、1次的な需要の増加で設備投資をした場合、1時的には稼働率が100%で利益が出るかもしれませんが、需要が落ち着くと赤字になってしまうという判断でした。

規模の経済性を考えるにおいては、稼働率というのは需要な指標なのです。

広義の規模の経済性では、変動費を減らす意味も含みます。これは、家電量販店を考えるとわかりやすいです。

家電量販店が低価格を実現し、街の電気屋さんは価格競争だとかなりの差がつけられました。

その結果、付加価値を提供できない町の電気屋さんの多くは廃業に追い込まれてしまいました。

この家電量販店の低価格を実現しているのは、大量仕入れによる仕入れコストの低下です。

全国チェーンの大規模だからこそできる大量の数の仕入れにより、仕入れ交渉を有利に進めることで実現できるのです。

「規模の経済性」というと、狭義には大量製造による1個当たりの固定費の低下を意味し、広義には大量仕入れによる1個当たりの変動費(仕入れ費用)の低下も含むのです。


習熟の経済性(経験曲線)とは、改善活動の積み重ねによってもたらされる

診断士試験では、「経験曲線」という名前で出題されるので、以下は経験曲線で統一します。

経験曲線は、経験を積めば積むほどコストが低下するという考え方です。

実はサービス業より製造業において効果が顕著に出ます。

日本は、第2次産業(製造業)の躍進で、大きな経済発展を遂げました。

その製造業の大きな課題の一つは、コストの削減です。

製造業を営む企業は、いかに無駄を減らし、製造工程を効率化するかを追求しています。

企業としてその改善活動の経験を積めば積むほど、無駄のない製造工程に近づいていき、余分なコストを削減できます。

それにより、コストが低下するのです。効率的な仕組みを作る効果は、人に依存する傾向が強いサービス業より、製造業の方がより効果が高いことがご理解いただけるでしょう。

改善活動を蓄積して、製造工程を効率化し、生産コストを低下させるのが経験曲線なのです。

このように一朝一夕でできるものではなく、長年の累積によるものです。

ですので、一般的には模倣が難しく、持続的な優位性になります。しかし、それが崩れることがあります。

それが、ルールの変化です。

例えば、今我が国の自動車産業を取り巻いている環境がそうです。

これまでガソリン車がメインでしたが、完全な電気自動車が今後一気に増えてくることが想定されます。

ガソリン車の製造における(モーターなどの部品も含む)蓄積されてきたノウハウが、電気自動車では通用しなくなるものも多いのです。

そうなると、これまで強い競争力を誇っていた企業の競争優位が大きく崩れることになります。

自動車メーカーや自動車部品メーカーの多くが強い危機感を持ち、様々な取り組みを行っています。

また、経験曲線は限界があります。

どこまでもコストを減らせるというものではなく、ある程度まで効率化が進むとコスト低下効果がほとんどなくなってきます。

(新しいテクノロジーを導入して、また改善が進みだすことももちろんあります)。

ちなみに、診断士の試験においては、規模の経済性との比較で、経験曲線の動的な部分(長年の蓄積によってもたらされるもの)が出題されていました。

経験曲線は動的で、規模の経済性は静的だと憶えても良いですが、理解しているとその場で読んで考えて十分正答できるかと思います。

実際の企業などをイメージして考えてみると分かりやすいので、勉強するときも具体的な企業と紐づけながらインプットするのがお勧めです。

私は、製造業ではいつもトヨタ自動車さんをイメージします。

規模の経済(狭義)も経験曲線も、トヨタ自動車を考えれば問題ありません。

規模の経済(広義)の小売りの企業としては、ヤマダ電気さんをイメージすればわかりやすいでしょう。


シナジー効果と同義の範囲の経済性とコンビニを考えればよくわかる密度の経済性の解説

コストを低下させる事業戦略のアプローチとしては、規模の経済性と経験曲線が代表的です。

これに合わせて、範囲の経済性と密度の経済性も押さえておきたいです。

範囲の経済性は、規模の経済性との違いを考えると理解しやすいです。

規模の経済性(狭義)とは、生産量を増やすことで、1個当たりの固定費を減らす考え方でした。

「範囲の経済性」は、異なる事業を行いシナジー効果で固定費を減らす考え方です。

例えば、パン屋さんが、比較的暇な時間を使ってパン教室をおこなうとしましょう。

パン屋の厨房を使えますので、場所代がかかりません。パン屋の主人が空いている時に実施すれば人件費もかからないでしょう。

このように、単独でパン教室をするより固定費を減らすことができるでしょう。

このように関連事業を行い、単独で行うより固定費を減らすことができるのが範囲の経済性です。

しかし、パン教室を行い不特定多数の人が厨房に出入りしているパン屋をどう思いますか?

衛生管理上、問題もあるでしょう。本業に悪影響があるかもしれません。

多角化は、コストを抑えて関連事業を行えるメリットもありますが、主力の事業の業績を悪化させてしまうかもしれない様々なデメリットを生じさせる可能性もあるのです。

メリットとデメリットを慎重に評価する必要があるでしょう。

経営者の役割は、限られた経営資源を効果的・効率的に活用し、最大限の成果を上げることです。

「規模の経済性」と「範囲の経済性」は同一の事業の固定費か、異なる事業の共通固定費かで異なりますが、共に経営資源をより効率的・効果的に活用することでのコスト低減です。

経営者の役割と紐づけると一層理解しやすくなるのではないでしょうか。

次に「密度の経済性」を見ていきましょう。

「密度の経済性」という言葉を聞いたことがない人もいらっしゃるかもしれせん、前述した3つのアプローチと比べるとちょっとマイナーかもしれませんね。

しかし、非常に有効で合理的な考えかたです。コンビニのドミナント出店(同一フランチャイズの店舗があるのに、近くに新規店舗を出店する)を考えれば分かりやすいです。

なぜドミナント出店するかというと、近くに店舗集中させることで、本部から商品を搬送するのを効率的にして、搬送コストを低下させているのです。

ドミナント出店は、様々なメリットとデメリットがあり、非常に面白い論点ですので、興味がある方は別途調べてみてください。

その他、トヨタ自動車グループもそうです。トヨタ自動車の部品を生産している子会社や孫会社が、愛知県豊田市周辺に集中しています。

また、アメリカのシリコンバレーも密度の経済性が働いています。物理的な距離を減らすことで、様々な活動が効率的になり、コストが減少するのです。


ブログのまとめ

まとめ:【診断士試験対策】コストを減らす事業経済性(規模の経済性、習熟の経済性(経験曲線)、範囲の経済性、密度の経済性)

中小企業診断士の試験対策として、コストを減らすアプローチである事業経済性で典型的なものを解説しました。

この記事の内容をまとめると下記です。
・規模の経済性は、製造量の増加で製品一つ当たりの固定費を減らす狭義の意味と、交渉力の増加によって仕入れコスト(変動費)を減らす広義の意味がある

・経験曲線は、効率化しようと改善活動を行ってきた経験の蓄積によってもたらされる

・シナジー効果により経営資源をより効率的に活用する範囲の経済性と、集積させることで物理的な距離に伴うコストを低下させる密度の経済性がある

コストを低下させることは、収益性を改善し、企業を成長させるうえで欠かせないものです。

日本のメーカーの競争優位を支えたものでもありますので、興味のある方は実際の企業の取り組みにアンテナを立ててみてください。

記事をご覧いただき、ありがとうございました。
  

この記事を書いた人
木下洋平

経営コンサルタント・研修講師
「ヒトが育つチームづくり」をはじめとした、人材育成と組織開発を得意としています
(保有資格)中小企業診断士・キャリアコンサルタント

投稿日 2021年3月04日

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