サイトアイコン 合同会社ミライオン

自社製品の市場段階を見据え、限られた資源を最大化する|中小企業経営者のためのA-Uモデル解説

A-Uモデル

A-Uモデル

産業発展の段階と革新のモデル(A-Uモデル)とは?
企業が成長・発展する過程では、製品やサービスをめぐる革新(技術革新)の形態が変化していくと言われています。これを体系的に示したものが、W.アバナシーとJ.アッターバックによる「A-Uモデル」です。中小企業の経営においても、製造業にかかわらず、イノベーションというものを考えるのにおいて、とても有用な考え方ですので、中小企業経営における活用という視点で、A-Uモデルを解説します。


AUモデルの概要

AUモデルでは、産業がまだ新しい段階では製品革新(ラディカル・イノベーション)が前向きに立ち上がり、次世代市場で「標準的な設計」が定まると、主流の革新が工程革新(プロセス革新)や小さな改良をインクリ(漸進的)イノベーションに移行すると説明されています。

1-1. 産業初期:ラディカル・イノベーション

  • 特徴:まだ製品やサービスが確立されていない段階で、先行企業によって様々なアイデアが実験的に投入されやすい段階です。革新的な新技術や新製品で市場を開拓し、顧客の注目を集めようと努力します。
  • ポイント:この段階では、新規顧客による比較検討されることが多く、標準的なサービスやデザイン、機能などが確立していないため、様々な挑戦が行われ、多様なサービスや製品が市場に投入されます。経営資源が相対的に乏しい中小企業においては、自社の生き残れる市場を見つけることが非常に重要です。

1-2. ドミナントデザインの出現

  • ドミナントデザインとは?
    市場に広く受け入れられる「標準的」かつ「主要な設計思想」です。これが定まると、市場はそのデザインを基準に次第に収束していきます。
  • 結果:顧客の使用状況や評価基準が共有され、性能やデザインの方向性が一つの「型」にまとまってきます。中小企業においては、標準的な機能や設計を理解しながらも、いかにコスト優勢性ではない顧客提供価値の視点で優位性を作れるかが非常に重要になります。

1-3. 産業の成熟:工程革新・インクリメンタルイノベーション

  • 工程イノベーション(プロセス革新)の台頭
    製品の基本がほぼ決まるため、新しい差別化よりも「生産効率設計」や「コスト削減」が重視される。中小企業は、この視点では基本的に競争は難しいと考えられます。
  • インクリメンタルイノベーション(漸進的イノベーション)の増加
    完全に新しいコンセプトではなく、小さな機能追加やデザイン改良で付加価値を高める方向に変わっていきます。中小企業においては、ある一点においてユニークなものを生み出し、明確な付加価値を提供することが求められます。

A-Uモデルが示す変化と中小企業への示唆

2-1. 変化するイノベーションの注目点

  • 初期フェーズ
    「全く新しい技術」や「大幅に異なるコンセプト」を打ち出すチャンスが大きいです。中小企業でも、ニッチ市場の発掘や独自ノウハウの活用で一気に注目を集められる可能性があります。
  • 成熟段階
    市場の標準が決まるためには、コスト競争力小さな改良による差別化が重要になります。これまで手探りだった製造工程を効率化したり、製品を改善して付加価値をつける戦略が有効です。

2-2. ドミナントデザインと組織設計

  • 初期段階:柔軟に意思決定を行うため、有機的な組織や風通しの良い体制が適切であることが多いです。
  • 標準確立後:業務プロセスの定型化や分業を推進し、効率性を高めていくために負担や責任分担を明確化した組織設計が必要になります。

2-3. 各種イノベーションの代表的な具体例

ここでは、AU-モデルで示される主な革新の種類ごとに、代表的な具体例を一つずつ挙げさせていただきます。

  1. ラディカルイノベーション(Radical Innovation)
    • 代表例:初代iPhoneの登場
    • 解説:スマートフォンという概念を一気に普及させるだけでなく、通信やコンテンツ利用の在り方を根本的に変えた大きな革新例として有名です。
  2. ドミナントデザイン(ドミナントデザイン)
    • 代表例: パソコンの「IBM PC互換機」スタイル
    • 解説: パソコン産業が黎明期から成熟期へ進む段階で「IBM PC」の設計思想が事実上の標準となり、その後続メーカーも同じ規格を採用して市場が一気に広がりました。
  3. 工程イノベーション(Process Innovation)
    • 代表例:トヨタ生産方式(TPS: Toyota Production System)
    • 解説: 各工程間の滞留をできる限り減らす「ジャストインタイム方式」や「カイゼン活動」によって、生産プロセスの無駄を徹底的に排除し、品質と生産効率を飛躍的に高めた手法です。参考になるモデルとなっております。
  4. インクリメンタルイノベーション(Incremental Innovation)
    • 代表例:家電製品のマイナーチェンジ(冷蔵庫の省エネ性能向上など)
    • 解説:基本的な仕組みは変えずに、省電力性能やデザインなどを刻みに改善していく形態。

中小企業がA-Uモデルを活用するポイント

  1. 自社が参入している市場の段階を見据え
    もし参入している市場が安定しているなら、品質向上やコスト効率、アフターサービスの充実といった工程面・サービス面での差別化を大事にしましょう。 「潜在的な需要」がありそうなのであれば、ラディカルな新製品開発が効果があるかもしれません。
  2. ステージに応じた投資とリスク管理
    ラディカルイノベーションは成功すればリターンも大きく、失敗リスクも高いです。 中小企業だからこそ、自社の強みを発揮できる特定分野に集中投資するなど、投資範囲やリスクコントロールが重要になります。
  3. 柔軟性と効率性のバランスを踏まえてドミナントが
    固まりつつある業界デザインでも、新しい技術が急に台頭する可能性がある。中小企業は大企業に比べ身軽なため、変化に合わせて迅速に対応できる体制を残しておくのが得策です。そして、常に新しい技術がいかに自社の製品やサービスの顧客提供価値に影響を与える可能性があるかについてアンテナを張っておきましょう。

まとめ

A-Uモデルは、産業発展とイノベーションの関係を理解するための強力なフレームワークです。

  • 初期段階:ラディカルな製品革新による先行者利益を狙う
  • 標準確立後:工程革新やインクリメンタル革新でコスト優位性・差別化を実施する

市場の動向と自社の強みを見極めながら、市場のイノベーション形態を意識することで、戦略の優先度やリスク管理に対するヒントを得られるでしょう。 ぜひA-Uモデルを活用して、自社のステージに合った取り組みを検討してみてください。


<お役立ちポイント>

  • 新規市場や技術の探索:大きなジャンプを目指すなら初期段階の市場・技術を探す
  • 工程改善の継続:標準が定まった領域でも、小さな改善や効率化による付加価値向上は重要
  • 変化に対する対応:安定期でも革新的な技術が突然登場する可能性があるため、情報収集と柔軟な組織体制を継続

自社がどのフェーズにあるかを客観的に把握し、A-Uモデルを参考に最適なアイデアを戦略を描いてみてください。

モバイルバージョンを終了